おはようございます、藤原です。
昭和初期に書かれた太宰治の短編小説『畜犬談』を読みましたが、深い洞察と辛辣な表現に刺激を受けると同時に、ユーモラスな語り口に魅了されました。
きっと犬が嫌いな人は主人公に共感されると思いますし、犬が好きな人にも感情の変化や人間の本質というものを垣間見ることができて楽しめるのではないでしょうか。
ここでは「犬」が登場しますが、これを「猫」とか「ペット」とか「子ども」などに置き換えて読んでみるのも楽しいかもしれません。
詳しく書くとネタバレになってしまいますので、気になる方はネットで検索してみてください。
さて、文豪と言われる人の文学作品を読む人が激減してきている中で、今でも文学作品を読んでいる人は、純粋に「好きだから」「おもしろいから」という理由であったり、想像を楽しんだり、アイディアが湧いたりすることに価値を見出してのことだと思います。
一方で、文学には興味が持てない、あるいは、「文学って何?」という人もいるかもしれません。
私が教員をしていた時代から、学校図書館から「文学全集」(夏目漱石、芥川龍之介、太宰治、川端康成など)のような日本が誇る文豪たちの作品が姿を消しています。
そこには、時代の流れ・わからない言葉・文脈の言い回しなどに難しさを感じ、作品の面白さまで到達できなくなった、という知的な作業への抵抗があるのかもしれません。
また、子どもたちが読まなくなった背景としては、大人が文学の面白さを伝えてこなかったことも一つの要因かもしれません。31年も教員をしていた身としては反省しかありません。
一番大きな要因として、科学や数学などに対して文学は「役に立たない」と判断されてしまったからではないでしょうか。
確かに、科学や数学が発達したことにより、技術や医療が発展し、結果として社会や日常生活が便利になり、資本主義社会が豊かになってきたことは事実だと思います。
ここで更に深くに考えてみると、科学や数学も「言語」でできています。
様々な基本法則を表現する抽象化した言語を「記号」とし、関係性をうまく表現したものであり、抽象化されているからこそ、あらゆる分野と繋がって社会に応用しやすいものだと認識されています。
そう考えると、文学は「言語」そのものでできており、具体から抽象まで想像を膨らませることが可能であり、読み手の能力によっては上限も下限もない知的で美しい世界。
何よりも科学や数学といった実験では検証することのできない、人間にとっての普遍的な問題に触れており、まったく別の系譜であると捉えてよいでしょう。
持論としては、現代人にとって文学作品を読む文化を取り戻し、高度で知的な作業を復活させていくことは、この国にとっても価値あることであり、民度を高めることに直結していると思っています。
なぜなら文学作品を読むことは、日常生活では経験できない世界を通り抜け、生き方の価値観を考え直し、さらに見識を高めることで人間理解を深め、精神的な成長と人格づくりに大きく貢献してくれるからです。
一方で、文学作品にどうしても価値を感じられないという方も少なくないと思いますので、そのような方は無理して読まれる必要はないと思います。
それよりもノウハウ本やビジネス書や自己啓発本の方が、すぐに役に立つ情報が満載であったり、心が軽くなったりしてメリットを感じられます。だから多くの人に読まれているのでしょう。
ただ、高い志を持って生きている人やビジネスで結果を出している人は、奥が深くて思考力を要するような文学作品に興味を持っている人が非常に多いというのを肌で感じています。
きっと経済合理性の外にある人間本来の知的で美しい世界を考えてみたり、相対主義に陥っている社会を外から眺めてビジネスのあり方を再考してみたりするのに、深い示唆を与えてくれるからではないでしょうか。
要するに、実用書や流行りの本しか読めないというのは、ある意味「固定化」された価値観に陥ってしまいがちであり、文学や古典も読めるというのは、昔や今に固定されず、多角的な視点を持ち、「変化」に美しく対応できる即応力にもよい影響を与えるものです。
人生やビジネスには、想定外のいろんな問題が起きてくるものですが、そのような時に、文学作品から解決のヒントを得たり、痛みや悲観から目を逸らさずに逞しく生きてく力を得たりしながら真摯に努力していく姿こそ、真に「美しい生き方」であると思っています。
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